オープンテラスに取材が来た。週末お昼の情報バラエティ番組から来た。
僕はお茶をお出しして、あとはゆっくり、と思いきや。
「マイクをつけさせて貰えますか」
え。
「お茶を出して、レポーターの二人と少しお話をしてもらえますか」
はあ。カツゼツ悪くてもよければ。
待ち時間。お茶とコーヒーを代わる代わる飲む。深呼吸を一分間で二十回する。肩で息。
給仕。
こちらアイス緑茶と嶺岡豆腐、それからこちらお坊さんのわらびもちでございます。
カメラが回っている。
あがってきた。
「ここにくればいつでも食べられるわけですか?」
いつでも、の中で様々に絡み合う条件、正確を期そうとする思い。答にやや詰まる。やや。テレビ的には長い長い、やや。
えー、はい、お出ししております。
「緊張してますか」
はい。
「わーかちかちになってる」
はは。
私は笑われている。私はいじられている。
初恋の一部始終を小学校のクラス中に喋られ演技つきで無限リピートの小学校フラッシュバック。
行く先々が失笑と後ろ指に満ちた黒い森のような中学フラッシュバック。
告白の五秒前見知らぬ不良にカツアゲをされた高校フラッシュバック。
なんであの人あんなに挙動不審なのと言われつづけた大学フラッシュバック。
自己PRと言われた時点でフリーズする就職面接フラッシュバック。
所属と職業を問われては全身が震える無職フラッシュバック。
落ち着け。さわぐな過去の自分。お前はもう昔のお前じゃない。店長だ。長として毅然とした態度を。大人として然るべきフォローを。
すいません、もう一回最初から出来ますか。
カメラは回っている。僕も回っている。
「はい、じゃあまきもどしボタン、ピッ」
レポーターさんのアドリブ。体のボタンを押される自分。
うあ、あ。
ま、巻き戻されてみました。
口走る。
なんか笑ってる!みんなが笑ってる!
「はい、オッケーでーす」
オッケーなのか。何がオッケーなのか。
流れてしまう。テロップがつく。笑い声が入る。司会の人にいじられる。本名付きで。顔出しで。関東中に。もちろんご近所にも同級生にも。
テラスにへたりこみ両手を着き首を垂れ、静かに消失することをひたすらに念じた。

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